卵子ドナー体験談 — 29歳会社員「キャリアの分岐点で選んだ協力」
29歳の誕生日を、一人で迎えました。出張先のシンガポールのホテルで、コンビニで買った小さなケーキにロウソク1本。そんな夜でした。
新卒で入った会社で7年働き、それなりの役職にもついて。でも、そのホテルの窓から見える夜景を眺めながら、「このまま、このルートで進んでいくのが本当に自分の望みなのか」という問いが、不意に浮かびました。
MBA、海外転職、独立
帰国してから、本気で人生の方向転換を考え始めました。MBA、海外転職、独立 — 20代後半の前半、どれも「今しかできない」選択肢に見えました。
でも、どれを選ぶにも、まずはお金が必要でした。MBAなら学費が500万円以上。海外転職なら現地での生活立ち上げに最低200万円。独立なら、最低でも1年分の生活費を確保しておきたい。
会社員の貯金だけでは、すべてに足りませんでした。
「協力」という選択肢
友人との食事会で、「卵子ドナーって知ってる?」と聞いたのが最初です。彼女は驚いた顔をして、「考えたことはあるけど、私は決められない」と言いました。
その夜、家に帰ってから、サイトを長い時間読みました。「20代女性のための」と書かれていたのに、自分は29歳。年齢制限ぎりぎりだ、と分かりました。「もう少し早く知っていれば」と少し残念に思ったのを覚えています。
翌日、思い切って問い合わせフォームに記入しました。「29歳でも対象になりますか?」というのが、最初の質問でした。
面談での気づき
初回の面談で、スタッフの方は丁寧に答えてくれました。「29歳までであれば、健康状態によってご検討いただけます」と。
そのあと、何度かの面談で印象的だったのは、「お金のためだけにする選択ではない」というスタンスでした。「ご自身の人生にとって、これがどう位置づくのか、ゆっくり考えてください」と言われました。
その問いに向き合う時間が、実は、自分のキャリアの方向性を決める時間にもなりました。
会社員と並行して
会社員のスケジュールでの通院は、最初は不安でした。でも、有給休暇を計画的に使い、ホルモン管理期間中も普段通りに仕事を続けられました。
採卵当日は、有給1日。前日にクリニック近くのホテルに泊まり、当日朝に処置を受けて、夕方には自宅に戻っていました。翌日は完全に休んで、3日目には会社に出社しました。
分岐点で選んだもの
あれから半年。私は、結局MBAの道を選びました。来年の秋からアメリカの大学院です。
29歳という年齢は、20代に比べて選択肢が少ない、と言われがちです。でも、自分は、29歳だからこそ、自分の意思で「協力する」ことを選べました。20代の頃の自分なら、もっと迷ったかもしれません。
キャリアの分岐点で、「自分のために、誰かのためにも」という選択ができたこと。それが今、自分の中でしっかりと残っています。

