卵子ドナー体験談 — 26歳居酒屋店員「母の手術代と、初めての海外旅行のために」
夕方の5時、居酒屋のシャッターを開けて、テーブルを拭いて、6時のオープンを待つ。それを4年、繰り返してきました。
サラリーマンの常連さんが「お疲れさん、いつもの」と言って入ってきて、私が「はーい、生中ですね」と返す。そういう小さなやりとりが、自分の毎日を支えてくれていました。
母の電話
地元から母の電話が来たのは、ある月曜日の午後でした。お店の出勤前、駅前のドトールでアイスコーヒーを飲んでいた時です。
「実はね、来月、簡単な手術を受けることになったの」
子宮の良性腫瘍。日帰りでは終わらない、入院5日の小さな手術。手術代と入院費で、全部で40万円ほど。母は「保険でだいたいカバーできるから、大丈夫よ」と言いましたが、自己負担が15万円ほど残るらしい、と分かりました。
父はトラックの運転手で、母はパートの掃除員。家計に大きな余裕はありません。「私が出すよ」と電話で言いました。母は「いいわよ、自分のお金は自分のために使いなさい」と言いましたが、私は出すと決めました。
常連さんの一言
サイトのことを知ったのは、お店の常連さんでした。看護師さんで、たまにカウンターに一人で座って、ハイボールを2杯飲んで帰る方です。
その夜、私が母の手術代の話をぼそっとしていたら、「20代の女性向けで、こういう選択もあるよ」と教えてくれました。「私の元同僚も、留学費用に使ってたよ」と。
その夜、お店を閉めて家に帰って、サイトを開きました。シャワーを浴びて、夜中の2時ごろまで、ずっと読んでいました。
母には、まだ言わない
初回の面談で、一番気になったのは「家族に絶対バレないか」でした。母には、心配かけたくない。母が「自分のために借金背負ったの?」と思ってしまうのは避けたい。
スタッフの方は、プライバシー保護の仕組みを丁寧に説明してくれました。「私たちが第三者に情報を伝えることはありません。医療機関にも、ご自宅にも、書類は届きません」と。
3回の面談を経て、母の手術の2ヶ月前に決断しました。
夜の仕事と並行して
居酒屋は夜の仕事です。お店のシフトは、夕方5時から夜中の1時。「通院は午前中ならどうにか」と思って、Happiness Egg Bankのスタッフの方に相談しました。スタッフの方は、私の生活時間に合わせて、午前11時頃からの通院を組んでくれました。
ホルモン管理の自己注射は、お店に出る前の夕方4時半。シャワーの後、メイクを始める前のルーティンに組み込みました。最初は緊張していましたが、3日目からは何でもない「いつもの動き」になっていました。
採卵当日は、お店に「歯医者の手術で」と伝えて、月・火・水の3連休をもらいました。前日にクリニック近くのホテルに泊まり、当日朝に処置を受けて、夕方ホテルでひたすら寝ていました。木曜日の夕方、いつも通りお店のシャッターを開けて、お客さんに「お疲れさん」と挨拶していました。
カウンター越しの「お疲れさん」
母の手術は無事に終わって、2週間で退院しました。今は元気にパートに復帰しています。私が15万円を振り込んだことを、母はあっさり「ありがとうね」と受け取ってくれました。
居酒屋の毎日は、変わりません。夕方5時にシャッターを開けて、常連さんに「お疲れさん」と返す。サイトのことを教えてくれた看護師さんは、相変わらずハイボール2杯飲んで帰っていきます。私は、そっと「ありがとう」と心の中で思いながら、おしぼりを差し出しています。
お金に余裕のない家の長女として、母を助けられたこと。それが、自分にとって、何よりの誇りになっています。








