卵子ドナー体験談 — 25歳美容部員「父の還暦旅行と、自分の夢のために」
朝5時半に起きて、自分の顔を仕上げて、6時半の電車に乗って、新宿のデパートに着くのが7時半。バックヤードで制服に着替えて、朝礼を経て、お店のオープンが10時。それまでに、商品の補充とディスプレイの整理を済ませます。
美容部員になって3年目。朝早く起きて、夜遅く帰る、立ちっぱなしの毎日です。それでも、お客さまに「あなたに似合うのはこっちですよ」とアドバイスをして、にこっと笑ってもらえる瞬間が、好きでこの仕事を続けてきました。
父の還暦
父が還暦を迎えるのは、来年の春です。母から電話で「お父さんとお母さんで、台湾に行きたいねって話してるんよ」と聞いた時、思わず「お祝い、私も出すから!」と言ってしまいました。
3人での台湾旅行は、4泊5日で30万円くらい。半分は私が出したい、と母に約束しました。15万円。私の月給は手取り20万円。家賃と生活費を引くと、貯金できるのは月に2〜3万円。1年間で頑張って貯めても、ぎりぎり間に合うかどうかでした。
もう一つの夢
もう一つ、ずっと心にあった夢がありました。「ネイリストの資格を取って、いつか自分でネイルサロンを持つ」 — 高校の時からの夢でした。
美容部員の仕事をしながら、夜にネイルスクールに通うには、20万円の学費が必要でした。台湾旅行の出費を考えると、ネイルスクールはまた来年か再来年か… と先延ばしにしていました。
休憩室での会話
サイトを知ったのは、デパートのバックヤードの休憩室で、後輩の美容部員と話していた時でした。後輩が「私の友達がやったらしいよ」と話してくれた時、最初はピンと来ませんでした。「卵子…?」と。
その日、家に帰ってから、お風呂に入りながらサイトを読みました。湯船の中で、スマホをタオルで包みながら、最後まで読みました。読み終わった頃には、お湯がぬるくなっていました。
「自分のためにいいのかな」
初回相談で、私は正直に話しました。「父の還暦旅行と、自分のネイル学校の費用が目的です」と。お金のためだけ、っていうのが、なんだか申し訳ない気がしていました。
スタッフの方は、「どんな目的でも、それがあなたの人生にとって意味のあることなら、それは自然なお気持ちですよ」と言ってくれました。「卵子提供は、結果として誰かの家族につながりますが、ご自身の動機は人それぞれで構いません」と。
その言葉で、自分のなかの罪悪感がふっと軽くなりました。3回の面談を経て、決断しました。
立ち仕事と並行して
美容部員は立ち仕事です。ホルモン管理中、お腹が少し張る感覚があった日は、立っているのがちょっとつらかったです。でも、休憩中に座って深呼吸すると、すぐに楽になりました。「日常生活で問題のないレベル」というスタッフの方の説明通りでした。
自己注射は、朝、メイクを始める前にしました。針が細くて、痛みもほとんどなく、3日目からは「いつもの一連の動き」の一部になりました。
採卵当日は、平日に有給を1日と土日を組み合わせて4連休を作りました。前日にクリニック近くのビジネスホテルへ。当日朝処置を受けて、夕方ホテルに戻って眠っていました。
台湾の夜市で
台湾旅行は、来月です。父はずっと「あれ食べたい、これ食べたい」と話していて、母は「お父さんがあんなに楽しみにしてるのは久しぶりよ」と言っています。両親の楽しそうな顔を見られるのが、今から楽しみです。
ネイルスクールの方は、夏から週2回の夜の通学が始まります。デパートの仕事と並行で、忙しくなりますが、自分の夢に向かって進んでいる感覚は、それまで持っていなかった種類の充実感です。
あの選択は、家族のためでもあり、自分のためでもありました。両方を「諦めない」ためのきっかけになったと、今、振り返って思います。








